282.北海道)一発試験 体験記(力作)  
大型自動二輪免許取得への道のり(Rindさん作)

表紙
第一章 きっかけ
第二章 準備開始
第三章 受験の申請(却下)
第四章 講習会1回目(二推第1段階)
第五章 講習会2回目(二推第2段階)
第六章 受験の申請(受理)
第七章 試験第一回目
第八章 講習会3回目(大試乗会)
第九章 試験第二回目
第十章 講習会4回目(二推第2段階)
第十一章 試験第3回目
第十二章 まとめ

第七章 試験第一回目

 5月25日、ついに試験の日になった。うーん、やっぱり雨だな。しかも結構強いぞこれは。昼までに上がってくれればいいなあ。でも路面は乾かないだろうから、急制動自信ないなあ。そうして、買ったけど今まで一回も使ったことのない、かっぱを事前に開封して着てみる。試験場でタグの付いた状態のものを出し、さらに着方が判らなかったりしたらあまりにもまぬけだから。そうそう、そのほかの格好どうしようか。ヘルメットについては諸説紛々だが、フルフェイスしか持っていないのでそれでいってみよう。靴は、申込の時にもらった受験の心得には「長靴」とはっきり書いてあったので、たぶんそれでだいじょうぶだと思うが、自分以外にだれもそんなやつはいないだろうな。グローブはオフ用のしかないのでそれでいく。いずれにしてもなんか言われたら、次から換えるしかないな。
 試験場へは四輪で行く。12時40分くらいに到着。雨は小降りになってきたが、まだ降り続いている。45分頃、長靴に履き替えて建物に入る。免許更新の人はたくさんいたが、ヘルメットを持っている人は見あたらない。ひょっとして、今日受けるのは自分だけか?と思ったところで、教習所出身らしき人を2人見つける。とにかく見逃してはまずいと思い後を付けていったら、「仮免講習室」に入っていった。そういえばこの前そんなこと言ってたな。ここが集合場所なんだなきっと、と思い中に入る。どうやら四輪の人と一緒みたいだ。二輪は見たところ、自分を含め3人しかいない。13時5分前に館内放送がかかると、ヘルメットを持った人たちがぞろぞろと入ってきた。結局、今日の受験者数は8名のようだ。「二輪の人はこっちです」と号令がかかって、違う部屋に行く。集合し並んだときに自分の格好が極めて浮いていて、結構恥ずかしかった。やはり自分以外はみんな教習所から来ていて、それ故それぞれの教習所のそろいのジャンパーを着ている。それはいいとしても、全員が同じジェットヘルとブーツを持っているので、フルフェイスと長靴の自分が特異に見えてしょうがない。まあ、何となく予想はできていたけど・・・。受験の心得には「長靴」としっかり書いてあったので決して間違いではない。それに、試験のためにオンロード用のブーツを買っては、「格安で」という今回のテーマに反してしまう。でもやっぱり恥ずかしい・・・。
 試験官が話し始める。
「教習原簿と免許を確認します」
といって確認を始める。もちろん自分には教習原簿はない。そして、
「今日はAコース。それから、路面が濡れているから急制動は14mでやります。13時半から始めるから、それまでに印紙を買って、あっちにいって待ってるように」
といって終わろうとしたので、それじゃあ何だかさっぱり判らないじゃないかと思い、
「印紙って何ですか」
と聞いた。
「賃車料の1000円分の印紙を買って下さい」
「何かに貼るんですか」
「そのまま持ってきて下さい」
ならそうと最初から説明して欲しかった。そんな感じだから、後はとにかく他の二輪受験者の後をついて回るしかなかった。はぐれたらきっとなんにも判らなくなるだろうから・・・。後をついて印紙を買って、そのあとコースの外周を歩いて、二輪の司令塔の一階の詰所にたどり着いた。今日はAコースか、よかったな。Cコースは難しいからなあと思い、それでも回路図を取り出しコースを再確認する。しばらくして、試験官が現れる。さっきと同じ人である。試験の注意事項を本当に簡単に話した。その中で、またも当然であるかのように「練習走行は知ってるね」と言った。他の受験者は、きっと知っているんだろう、だれも何も言わなかった。「出発点を出て、ぐるっと回って一周し終わったところから採点を始めます。だから、その間は減点の対象にはなりません。でも、乗車の時は点数を付けているます。」と説明した。なんだ、そうゆうのがちゃんとあるんだ。札幌の試験場は無いものだと思っていた。少しでもバイクに慣れることができるんだと思ったら、また少しほっとした。
 試験が始まる。1番目の人がバイクの横に立つ。乗車、発進の手順はほぼ自分がイメージした通りである。次々と課題をクリアしていった。結構練習したんだろうなあという走りである。しかし、後半の一本橋で落輪。戻ってきたときは結構ムッとしていて、グローブをポンと投げていた。順番が次々進んでいく。完走する人が多いが、クランクでコースアウトし検定中止になる人もいた。完走できない人が帰ってくると、その度にヤな雰囲気になる。だんだん自分の番が近づいてくる。まわりはきっと、「この長靴野郎はどれほどの腕前でここに来てるんだ」と思っているんだろうなあと思うと、ますます孤独感が高まる。ところが、前の人が完走しそうになる頃には、そんなことはどうでも良くなっていた。
 いよいよこの時がきた。計画以来半年にして、本当にスタートラインに立ったなという感じである。いつ以来だろうか、久々に緊張しているのがわかる。試験開始だ。司令塔に向かって手を挙げる。左右を確認して、バイクを起こす。重い。こんなに重かったっけ?と思うほど、試験車両の重量感覚を忘れている。講習から9日も経っているので無理もないか。跨って、確認して発進する。最初の左折で、かなりふらつく。感覚を忘れすぎているのがわかる。練習走行で小さく一周した後、2速のままクランクに進入。進入速度が思ったより速く、バランスが取れない。最初の屈折でグラッと右に傾いた。「ボン」と乾いた音がした。あっ、パイロンに接触したか?と思い振り返ると、見事にパイロンが倒れていた。あぁ、接触(大)だぁ。検定中止か?と思って程なく、「ザ〜・・はい、出発点に戻って」と無線がなった。無情だ、という気持ちになりながら、ぐるっと回って出発点に帰った。指摘事項があるかと思い、降車して司令塔に手を挙げたら、試験官は司令塔から降りてパイロンを直していたので、何も指摘事項を聞くことができなかった。もっとも、指摘されるならば「もっと練習してから来い」に尽きるだろう。そうして、初めての受験はおよそ3分で終了した。
 詰所に戻って、「予想通りクランクだったかぁ」「絵に描いたような惨敗だったなあ」「ああ、やっぱり甘くないな。練習できないんだから、何回やっても同じなんだろうなぁ。もう受けるのはやめようか・・・」などと、ものすごい弱気になっていたが。他の人が試験を終えるまでかなり間があったので、その間に悔しさがこみ上げ、その弱気をはねのけてしまった。「1回目は落ちて当たり前。3回落ちるまでやってやる」「次は絶対完走するぞ!」と。
 自分の次に走った人が、例の「指定前教習」を受けた人らしく、本当にうまかった。白バイ隊員のようなきれいな走りで、何かがあって橋から落ちない限り、絶対合格するだろうな、といった走りである。そんな彼でも、戻ったときには試験官より「もっと脇を締めるように」と指摘されていた。試験官はよっぽどでない限り、誉めることはないだろうな。全員の試験が終了したあと、また外周の外を歩いて試験場の母屋に戻った。
 さて、これからどうしたらいいのか。教習所の生徒のうち、検定中止の人はさっさと帰ってしまった。もう後を付いていくことはできないな。次の受験を申し込みたいので、取りあえず「技能試験係」へ行った。そこでは、「合格発表があるまで申請書類を返すことはできないので、合格発表が終わってから来て欲しい」と言われた。なんと、合格発表があるまで次の受験を申請できないのだ。たとえ検定中止でも、じっとその時を待っていなければならない。発表の時間がいつなのかも判らない。なんだか極めて無駄な時間だなと思ったが、次の受験までの作戦を考えるにはちょうど良かった。まず、今日の敗因を考える。思うに、ライディングスクールから結構間が空いてしまったこと。また、この前の土日に自分のバイクに乗りすぎた(約 400km)ことにより、VFRの重量感覚や操作感覚、クセなどをすっかり忘れてしまったことにある、という結論に達した。それじゃあ次はどうするか。そうそう、今度の日曜日には、前出のバイク屋が主催し、教習所で開催する大試乗会がある。目的は試乗会ではなく、同時に開催される「ライディングスクール」である。使用車はVFR−750Kでうってつけ。しかも、講習料は無料!これに参加し徹底的に練習して、とにかくVFRに慣れよう。そしてその次の火曜日に受験すればいいとこ行くんじゃないかな。日曜日が雨だったら、受験を延期すればいいな。ということで、一週間後の来週の火曜日に受験することに決めた。
 16時頃、合格発表を「見学」する。他の技能試験の発表と同時らしく、結構人が集まっていた。結局、今日の大型自動二輪については、8人中4人が受かっていた。落ちた自分がこんなことを言うのは、受かった人に本当に失礼なのだが「おお、あんなんでも受かるのか。これまで聞いてきた感じとだいぶ違うな。」という印象だった。本人も「あんなんで受かると思わなかった」と言っていた。その後すぐに技能試験係へ行く。自分の書類は部屋の片隅にある変なザルの中に入っていた。
「もう一度受けたいんですが」
と告げると、新しい受験申請書類を出してきて、
「これに記入して、印紙を買って貼って持ってきて」
と言われた。もう二度目なので、何の迷いもなく記入し、印紙を貼って持っていった。
「次は何曜日になりますか?」
「来週の火曜日になるね」
「わかりました」
ということで、作戦通りに受験できることになった。
「練習してきて」
と最後に言われた。「できるモンなら、いくらでもやってきたいよ」と心の中でつぶやいて、雨が上がり、すっかり路面の乾いた運転免許試験場を後にした。
[1999/07/02]
         
 
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